【d!】前世は打ち首今世は入れ替わり (ページ6)

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ビクッとした。
部屋のどこかから知らない声が聞こえる。
周りを見渡してもぼやけていて何もわからない。少しの恐怖でこんなにも動けないものか、恐る恐る口を開く。

「……誰かいますか…？」

反射的に手で口を塞ぐ。私の口から発せられた音は野太く低い。聴こえてきた声の正体は自分の喉にあった。
手を少し離して軽く声を出す。

「………ぁあ」

たしかに自分の喉から出た声だった。間違いじゃない。喉が枯れているわけじゃない。これが地声になっている。

「嘘っ…！何この声！？」

明らかに男の声。

おじいちゃんではない
おっさんとも言えない
お父さんほどでもない
中学生とまではいかない

大学生か高校生位の声。

喉元にそっと手をやりなぞってみると凸凹している。寝惚けていて気づかなかったのか。
思わず息が詰まってしまう。止まらない汗に身体を濡らしながら辺りをもう一度見渡し、目をよくよく凝らしてみると視界がぼやけながらも家具の配置が違うことがわかる。

自分の部屋じゃない。

「ぇぇええええ？誘拐？ここどこ！！？？」

転ける勢いでベッドから降りて、床に落ちていたプリントで滑り本当に転ける。

「痛っ、てことは夢じゃない…！？」

ジンジンとくる痛みは夢でないことの証明になってしまった。

「何なの？！周りもよくみえないし、喉変だし…もうやだよ………」

涙目になりながらとにかく立ち上がろう、と近くにあるもの捕まろうとする。
姿見にもたれ掛かった。

鏡にはうっすらと自分でない誰かが映っている。

「誰…？この人……」

姿見に顔を近づけるとその姿に思わず息を呑んだ。映る姿は世の中がイケメンと分類するであろう顔。

パッと目をひく澄んだ藍白の瞳と金糸で編んだような艶と髪色。顔のパーツの位置すらも黄金比。

完璧に整った顔だ。そして、私はこんな顔じゃない。