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自分に与えられた時間は牢獄から断頭台へ辿り着くまでの数分と執行までの数秒。時間の流れは案外遅く感じる。
もうすぐ死ぬというのに酷く冷静でそれでいて涙は止まらない。手は拘束されているから涙を拭くことすらも許されない。
思い返してみてもあまり良い人生じゃなかった。こんな若くして死ぬなんて誰が考えるんだ。死にたくない、耐えられるわけがない。
国民の視線が身体を突き刺し、目眩がしそうで胃から酸っぱいものが込み上げてくる。
「信じられない…幹部補佐だったんでしょ？スパイだったとか私情で殺そうしたとか色々噂たっているし…恐いわねぇ」
「自分の国にあんなのがいたなんてホントおぞましいわ」
シャワーのように浴びる罵詈雑言には心を抉られる。どの噂話にも真実なんてどこにもなく私が悪役としてのストーリーが広まっている。そんな国民の声が遠ざかっていくがそれと同時に断頭台へ近づくことも忘れてはいけない。
「おい！早く歩け」
乱雑に扱われながら私の頭が台に重くのしかかる。
総統様、幹部様
どのような顔で私をみておられるのか
恐ろしくて見ることすら儘ならない。
これ以上ない程の尊敬の念を抱いていた。
総統様に
幹部様に
国に
命を懸けようと誓ったのに
これが私の最後だなんて。
こんなことなら軍人なんか憧れるんじゃなかった。
そうすれば今頃、家で暖かいご飯を家族と食べていたのだろうか。
家族みんなでお家の畑を耕かして
お化粧に着れなかった可愛いお洋服で街を歩いて
街角でぶつかった素敵な男性と恋なんかしちゃったりして
一緒に色んなとこに出掛けて
プロポーズされたりして
結婚式ではママとパパに感謝を伝えて
旦那さんとは新婚旅行なんか行きたいな
幸せな家庭を築いて
可愛い子供に恵まれて
男の子かな女の子かな
子供の成長を見るのも楽しいだろうな
考えたらきりがない。
数十秒、Aの頭に綴られたのは淡く儚い夢幻だった。
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作者名：跳ね子さん | 作成日時：2024年3月17日 1時
